「親みたいになりたくないのに、気づくと同じことをしてしまう……」
「子どもに優しくしたいのに、怒りが抑えられない……」
子育てをしながら、そんなふうに悩んだり自己嫌悪に陥ってしまう方は少なくありません。
かつてのわたしも、そうでした。
「反面教師にしてきたはずの親と、同じような言動をしてしまう…」
「あんな親には絶対にならないと思ってきたのに、なぜ……? 」
その答えがわからないまま娘に感情的になっては落ち込み、夫婦関係もうまくいかず、気づけば娘が人の顔色を過剰にうかがうようになっていたのです。
そんなわたしが複数のカウンセリングを受け、心理を学び直すなかで見つけたのが
毒親の連鎖を断ち切るためのたった2つのカギでした。
それが「価値観」と「境界線」です。
つまり、
- 自分を生きづらくしている価値観を手放す
- 子どもとの境界線を引く
この2つが、自分の毒親化を断ち切るために欠かせませんでした。
このブログにたどり着いたあなたも、
「自分も親と同じようになっているのではないか」
そんな不安を感じているのではないでしょうか。
でも大丈夫。
連鎖は“気づいた人”が止めることができます。
この記事では、連鎖が起こるしくみと、そこから抜け出すための本質的な方法についてお伝えしていきます。
毒親の連鎖に悩む人の多くが縛られている生きづらい価値観

自分が毒親かもしれないと不安になっている人の多くは、無意識のうちに生きづらい価値観が刷り込まれています。
たとえばあなたがまだ小さな子どもだったとき、
- 「泣いちゃダメ」
- 「弱音を吐くのは甘え」
- 「わがままを言うな」
などと、親から繰り返し言われてきた。 また、
- 両親の仲が悪かった
- 常に親の顔色をうかがうのが当たり前だった
という経験はありませんか?
これらのような環境で育つと、子どもは
- 「弱さを見せてはいけない」
- 「人に甘えてはいけない」
- 「わがままを言っちゃいけない」
- 「頑張らなきゃ愛されない」
と、自分自身を追い詰めるような生きづらい価値観に縛られてしまいます。
でもその奥で、本当はこう願ってはいませんでしたか?
- 「甘えさせてほしかった」
- 「褒めてほしかった」
- 「否定せず、認めてほしかった」
- 「失敗しても怒られたくなかった」
そんな願いは、子どもなら誰もが自然に持っているもの。
けれど、1人では生きていけない小さな子どもにとって、親に嫌われることは生死に関わる最大の不安要素です。
だからこそ、本当の気持ちを無意識に心の奥へ押し込め「親に好かれる自分」「怒られない自分」を必死に演じてしまいます。
もしかすると今も、 そのときに身につけた「いい子でいるための価値観」が心の中に残っているのかもしれません。
その価値観が本音を押し込めたまま大人になったあなたを縛り続け、子育てへの不安につながることがあります。
関連記事:毒親の世代間連鎖はなぜ起こる?3つのメカニズムとは
毒親の連鎖に多くみられる3つのパターン

生きづらい価値観があると、子育てにどのように影響するのか?
カウンセリングで毒親の連鎖を心配されている方によく見られる、3つのパターンを例にあげてお話しします。
- 毒親の連鎖パターン1)自分に許せないことを、子どもにも許せない
- 毒親の連鎖パターン2)自己肯定感の低さが、子育てを苦しくさせる
- 毒親の連鎖パターン3)自己犠牲の刷り込みで子育てが辛くなる
毒親の連鎖パターン1)自分に許せないことを、子どもにも許せない
子どもの頃に刷り込まれた価値観は、無意識のうちに「自分に課したルール」になっていきます
すると、人は「自分に許せていないこと」をさも当たり前にしている他人を見ると、怒りや嫌悪感、嫉妬などの強い感情を抱きやすくなるのです。
たとえば、自分が「甘えたり、弱音を吐くこと」を自分に許可できていないと、
子どもがわがままを言ったり、甘えてきたりしたときに
「なんでそんなにすぐ弱音が吐けるの?」
「私はできなかったのに…」
「ズルい」「うらやましい」
そんな無意識の感情が、イライラや怒りとなってあらわれることがあります。
親自身の心の奥にある「本当は自分もそうしたかった」という思いが、形を変えてあふれているのです。
毒親の連鎖パターン2)自己肯定感の低さが、子育てを苦しくさせる
親との関係の中で「空気を読む」「自分を抑える」ことが当たり前になっていた人は、
「自分はこのままではダメだ」
「ちゃんとできないと認めてもらえない」
と、心のどこかで無意識に思い込み、自己肯定感が低くなります。
すると
- 世間や人から評価されない自分には価値がない
- 結果を出せない自分には価値がない
と思ってしまいがちです。
そんな自己肯定感の低い人が親になると、
「ありのままの自分で子どもに向き合う」という感覚を持つのが難しくなります。
代わりに、
- ちゃんとした親にならなきゃいけない
- 失敗したらダメな親と思われる
- 子どもがうまくできないと、自分まで否定された気持ちになる
といった思い込みから「完璧な親でいなきゃ」というプレッシャーを自分にかけてしまうのです。
でもその評価は、誰からの評価でしょうか?自分は何に認められたいのでしょうか?
このように、心の奥で「人や世間からの評価」に縛られていると、
無意識のうちに、その不安を解消しようとしてしまいます。
その結果、子どもを必要以上にコントロールしようとしたり、
感情的に怒ってしまったり、過干渉になってしまうことがあるのです。
毒親の連鎖パターン3)自己犠牲の刷り込みで子育てが辛くなる
毒親育ちの人には、
「自分は我慢しなきゃ」
「人に迷惑をかけてはいけない」
といった思い込みを、子どもの頃から抱えている方が少なくありません。
そうした価値観は大人になっても無意識に残り、
「子育ては自分ひとりでなんとかしなきゃ」
「母親なんだから頑張って当然」
と、過剰な責任を自分に背負わせてしまいます。
たとえば、
- 子どもを優先して、自分の体調や気持ちは後回し
- 「わたしさえ我慢すればうまくいく」と自分を犠牲にする
- 夫や周囲に頼れず、すべてを一人で背負い込む
一見、献身的で愛情深いように見えるこの姿勢も、実は心や体を少しずつすり減らしてしまいます。
そしてあるとき、ふとこんな思いがあふれ出てきます。
「わたしばっかり、こんなに頑張ってるのに…」
「どうして子どもはわかってくれないの?」
この「わかってほしいのに、わかってもらえない」という感情は、心に「被害者意識」を生み出します。
そしてその気持ちは、子どもが言うことを聞かないときや、思い通りにいかないときに刺激され、怒りやイライラとなってあふれてしまうことがあるのです。
「こんなに頑張ってるのに、どうして!?」という怒りの裏に隠れているのは、
あなたが子どもの頃に叶えられなかった
「認めてほしい」「報われたい」「つらさをわかってほしい」
という切実な願い。
けれど本当は、
子どもは、あなたが自己犠牲して生きることを望んでいるわけではありません。
あなたが自分の人生も大切にしながら、笑顔でそばにいてくれること。
それが、子どもにとっていちばんの安心になります。
毒親の連鎖を断つカギ①:自分の生きづらい価値観を手放す

毒親の連鎖を断ち切るために、一番大切なこと。
それは、あなた自身が幼い頃に刷り込まれてしまった「生きづらさの元になる価値観」に気づき、手放すことです。
・「弱さを見せてはいけない」→弱さを見せてもいい
・「人に甘えてはいけない」→人に頼ってもいい
・「自分の感情は抑えなきゃいけない」→感情を出してもいい
・「頑張らなくちゃ意味がない」→完璧じゃなくていい
そんなふうに自分に少しずつ許可を出し、ありのままの自分を受け入れると
自分自身を大切にできるようになります。
すると子どもの言動に対しても許せる範囲がひろがり、子どもには「受け入れてもらえた」という安心感が生まれ、親子の関係性が好転します。
※不要になった価値観の手放し方についてさらに詳しくは、また別のブログで書きますね。
毒親の連鎖を断つカギ②:「子どもとの境界線」を引く

価値観を手放すのも大切ですが、毒親の連鎖を断ち切るために加えて意識したいことがあります。
それは、子どもとの境界線を意識すること。
人にはそれぞれ自分の「心の敷地」があります。
たとえ親子であっても、相手の敷地に土足で踏み込んではいけません。
自分の気持ちや考えを大切にできる人は、相手との間に心の境界線を引けています。
すると相手の気持ちや考えも、ちゃんと尊重できるようになるのです。
毒親育ちのあなたは、もしかしたら親の過干渉や否定などにより自分の敷地に親が踏み込むのが当たり前になっていたのかもしれませんね。
もしくは、親の機嫌を損ねないよういつも親の気持ちを背負い、自ら親の敷地に侵入していたのかもしれません。

そういう環境で育った人は、親子の境界線があいまいになってしまっているケースが多くみられます。
そして自分と子どもとの境界線も、同じくあいまいになってしまいがちです。
親が子どもの「心の敷地」のあいだに境界線を引けるようになると、
子どもは「自分の気持ちを尊重されている」と感じ、安心して自分らしく育っていけます。
そして親であるあなた自身も、必要以上に子どもをコントロールしようとしなくなり、関係がずっとラクになります。
関連記事:母親がかわいそうと罪悪感を抱えるあなたへ|親の呪縛を手放す方法
もしひとりで手放すのが難しいと感じたら…

長い間しみついた価値観を手放すのは、思っている以上に難しいことです。
頭では「もう必要ない」とわかっていても、心のどこかで「でもやっぱり…」と、自分の思考がそれを引き止めてしまう。
それは、あなたが弱いからでも、意志が足りないからでもありません。
それほどまでに私たちの価値観は深く根づき、無意識のうちに自分を傷から守ってくれていたものだからです。
だからもし、ひとりで向き合うのがつらくなったら無理をせずに、専門家のサポートを頼ってみてくださいね。

